昔から育てられている果樹は、最近の品質改良された果樹にくらべて品質的に劣ることがあり、接ぎ木によって改良することがあります。接ぎ木は、複数の植物を、人工的な切断面で接着して1個の個体にする技術ですが、ここでは私が習得した方法についてかきました。
私の接ぎ木の経験
果樹や樹木を改良するためには、接ぎ木の技術を習得することが必須ではないかと思い、5年程前から本やインターネットを参考に挑戦しました。
主に、柿の木で行っていましたが、最初はうまく行かず、失敗を繰り返していましたが、3年目にやっと活着させることが出来ました。
その後、林産物として、猿や鹿の食害に比較的つよいイチョウや山椒がいいのではないかと思い、毎年、接ぎ木を行ってきました。
具体的には、購入した苗を育てたものを穂木とし、実生で育てたイチョウに苗や自生する、小粒の実がなる山椒に接ぎ木することを行ってきました。
まだ失敗もありますが、成功率は上がってきましたので、山椒を例に私が行っている方法を書くことにしました。参考にしていただければ幸いです。
接ぎ木の要点

接ぎ木の要点
最も参考にさせてもらったのは、藤波昌明著:「上手な接ぎ木法」です。絶版になっているようですが、細かなことが詳しく書かれているので、有り難い本です。
上の図に、要点を書きました。接ぎ木は、休眠期の2月に準備しておいた穂木を使い、台木が形成層によって水分を吸い上げる、4月初め頃に行います。
2月ごろに採取した穂木は、水分が不足した状態にあるので、4月に台木の形成層に密着されると、供給される水分を吸い上げようとする性質があることを利用しています。ただ、台木からの水分は多すぎるとうまく癒着しないとのことなので、実施する時期などが大切です。
実際の処理方法は後ほど述べることとし、まず要点をまとめておきます。
- 準備してあった穂木から、2~3芽を付けて切り取ります。
- 穂木の表皮を薄く剥がして台木と密着させる形成層を露出させます。(右図、左側点線)
- その背面下部を切り落とします。(右図、右側点線)
- 台木の表皮を切り下げます。穂木の露出した形成層より長めにします。
- 穂木の形成層と台木の形成層を合わせ(全面でなくてもよい)、密着するように合わせて固定します。特に、先端部に隙間ができないよう注意する。
以上が、基本的な考え方になります。次に、実際的な方法について述べます。
まず、使用する道具は次のようになります。
- 切り出しナイフ
- 剪定ばさみ
- ニューメデール(接ぎ木用テープ)
- ビニールテープ
以下、実際の手順を、写真を使って説明します。
接ぎ穂の準備

接ぎ穂の準備
太さは、台木と同じかそれよりも細めのものを選びます。剪定ばさみを使って、穂木を芽を2~3個付いた状態で適切な長さに切断します。
切り取った穂木を、先端から下方向に向かって、ニューメデールを引き伸ばしながら巻き付けます。芽の部分は重ね巻きしないように気を付けます。

表皮を剥いで形成層を露出
切り出しナイフを使って、穂木の表皮を剥きます。このとき、ナイフは穂木に斜めに、軽く当てて移動させます。力を入れすぎると形成層を取ってしまうので気を付けます。青く見える部分が形成層です。

接続面の背面を切り落とす
次に、露出した形成層の背面の端部を切り落とします。その状態で、台木の準備をします。穂木の切断面が乾かないように口にくわえて作業をします。
台木の準備と接ぎ穂の固定

台木に切り込みを入れる
最初に台木を、剪定ばさみで切断します。
切り出しナイフを使って、台木の形成層に近い部分を切り下げます。ナイフで手を傷つけることがあるので、気をつけます。

完成!
穂木を台木に密着させて、ニューメデールテープで固定するとともに、外部から水分が入らないように、穂木及び台木をテープで包み込みます。
最後に、接いだ部分がずれないように、ビニールテープで巻きます。ただし、強すぎると接着部分の成長に影響がでるので注意が必要です。
接ぎ木をした後の様子については、つぎの記事に書いていますので、こちらもご覧ください。
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接ぎ木後1年の結果は?
私は、イチョウや柿の樹についても接ぎ木を行っています。せっかく作るからには、いいものを作りたいと思います。
参照サイト
Wikipedia 接ぎ木
藤波昌明著 農林統計協会 「上手な接ぎ木法」